第1章 好きって言って
「お邪魔します」
今日は直樹の家の玄関で、私が挨拶する。
「どうぞ。誰もいないし」
「そっか」
「俺の部屋でいい?」
「うん」
直樹の部屋に入るのも何年ぶりだろう。
しょっちゅう遊びに来てたのにね。
直樹の部屋に入る。
……。
「ちょっと…何、この机…」
学習机の上がとっ散らかってる。
教科書が上下関係なく棚に差し込まれて、そのすき間にプリント類が刺さってる。
「あ…ごめんね。散らかってて」
直樹が笑ってごまかす。
「こんなんだから、宿題があったかどうかも忘れるんでしょー? ちゃんと片付けないと」
「うん…ごめんね。えへへ」
まったく。ちょっとだらしないとこも変わってない。
気を取り直して、宿題を一緒にする。
……。
直樹、小学生のときから勉強は苦手ぽかったけど…こんなにも出来なかったんだ…。
宿題をする直樹の様子を見て思う。
直樹が私の顔を見て、少し恥ずかしそうに微笑む。
「ごめんね。ゆうちゃんが一生懸命教えてくれるのに、俺あんまりわからない。バカだから…」
「そんなの気にしなくていいよ。直樹が勉強苦手なの、私、知ってるから」
「うん…。でも、ゆうちゃんは勉強出来るし、友達もいっぱいいるから…。俺と一緒にいても面白くないよね…」
「直樹…。私、この前直樹と絵本読んだのすごい楽しかったよ。春休み、暇だからもっと一緒に遊ぼう。机の整理も手伝ってあげる」
「ありがとう、ゆうちゃん」
直樹は嬉しそうに頷いた。