第6章 ねぇどっち?後編
ガチャ
玄関の扉を開けると、良太が立ってた。
「なんだ。良太か」
「なんだとはなんだよ。ゆう! 参考書貸して。ほら、あの…中学の英語構文がすべてわかる…ってやつ」
「え、あれ難しいからいらないって言ってたじゃん、良太」
「勉強したからワンランクアップしたの! いいから貸して」
「はいはい。ちょっと待ってて」
私が部屋に戻ろうとすると、良太も靴を脱いで上がろうとする。
「すぐ取ってくるから待っててよ。友達来てんの」
「男な。なんかしてたの? 僕が部屋に入ったら、なんか困るわけ?」
「なんかって何よ。別に困らないけどさぁ…」
良太と一緒に階段を上がって部屋に向かう。
別に困らないけどさぁ…なんかさぁ…。
部屋に戻る。
遠藤くんが私のベッドに腰掛けてる。
さっきまで机の前にいたのに!
「こんにちは。隣の子?」
遠藤くんが良太に声をかける。
「そう。ゆうの隣にずっと住んでる。こんにちは、先輩」
ゆう、のとこを強調して良太が答える。
「ほら、参考書」
私は良太に参考書を差し出す。
「君、中学生のわりに背が高いね。スポーツかなんかやってんの?」
遠藤くんが良太に問いかける。
良太は私の差し出す参考書を無視して、そっちを向く。
「中学生つっても中3だから! バスケ部!」
「ふーん。うちのバスケ部はイマイチだよ。N高に行くといいんじゃないかな」
遠藤くんは笑顔で話す。
でも…なんか怖。
「余計なお世話!」
良太が声を荒げる。
なんなんだろう、この雰囲気…。
「良太…参考書…」
とりあえず、もう一度良太に声をかける。
「ありがと! ゆう、明日も遅れるなよ!」
良太は私の手から参考書をひったくり、階段をかけおりて帰っていった。
……。