第6章 ねぇどっち?後編
「わぁ…女子の部屋に入るなんて初めてで…お邪魔します」
遠藤くんが私の部屋に入る。
「どうぞ。そんなに女子っぽくない部屋だけど」
「いやいや! 充分女子っぽいですよ! ベッドカバーがピンクですよ!」
「…なんか期待にそえたみたいでよかったよ」
折りたたみテーブルを出して一緒に勉強する。
「さっきの隣の男の子…中3って言ってましたけど、志望校はどこなんですか?」
遠藤くんが私に問いかける。
私は少し手を止めて、ノートから顔を上げる。
「んー…いちおう、うちの高校。私的にはN高がいいと思うんだけどね。良太は私が入れたんだから…って思ってるんだろうけど、私もN高に行けばよかったのかなぁって後悔してるし…」
「後悔…。田中さん…どうして?」
「だって、勉強難しいし…」
「田中さん」
遠藤くんが、私の手からシャーペンを取り上げ、その手を包むように両手でそっと握る。
へ…?
「大丈夫、俺がついてます。普通科なら高校の勉強はどこでもだいたい同じなんですよ。まだ一年生なんですから、いくらでも取り戻せますよ、田中さんなら…。
あ、隣の子についてはN高を勧めておいたほうがいいと思いますが」
遠藤くんは優しく微笑み、私の顔をじっと見つめる。
「はは…そうかな…。はは…。えっと…」
何この雰囲気。
この手はどうしたら…。
ピンポーン
はっ…!
玄関のインターホンの音が鳴る。
「あ、ごめん。誰か来たみたい。ちょっと待っててね」
私は遠藤くんの手をほどいて立ち上がる。
ちょうどよかった…。
私は玄関に急ぐ。