第5章 ねぇどっち? 前編
「ゆう、高校に彼氏でも出来たの?」
良太が口を開く。
「え? なんで?」
予想外の質問に、私は思わず質問を返す。
「高校に彼氏がいるから、僕が同じ高校に行くのイヤなんでしょ」
「別に…いないよ。そんなの」
「本当に?」
良太が私の顔をじーっと見る。
「うん」
私は頷く。
「だよね」
良太がニコーッと笑う。
「はぁ? 何、その言いかた」
私はちょっと頬をふくらます。
「大丈夫だいじょぶ。僕が受験終わったら…んー…なんでもないっ。
ゆう教えて。僕こういう問題苦手」
良太が数学の教科書を指差して言う。
「ん? どれどれ…。あぁ、こういうのね。これは…」
「うんうん」
良太は機嫌を直したみたいで、私の説明を素直に聞いた。