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渡り廊下で恋をした

第5章 ねぇどっち? 前編


「さっきから呼んでたんだけど…」

「え? いや、だって。俺に話しかける人がいたってこと自体、なかなかないですし、しかもそれが女子とか? そんな奇跡みたいなイベントが俺に降りかかることがあるとは、にわかに信じがたく…。
これはフラグですか? それとも罰ゲームか何かですか?」

彼が早口にまくしたてる。

ちょっとこの人、何言ってんの。わかんない。

「これ、駅で拾ったから。どうぞ」

私はとりあえず、彼の生徒手帳を渡す。

「は? 生徒手帳? どうしたんですか? これはもしかして俺のですか?」

彼は生徒手帳を受け取り名前を確認する。

「…俺のだ。なぜ? なぜ、田中さんが俺の生徒手帳を?」

私の名前はいちおう知ってんの?

「自販機でジュース買うとき落としたんじゃない? 自販機の前に落ちてたよ」

「あぁ…田中さんがおしるこを買っていたときですか」

「いや、今日はおしるこ買ってない。ミルクティー買ったから。じゃあ…渡したからね」

私は彼に生徒手帳を渡し、立ち去ろうとする。

ガシッ

……!

突然、後ろから遠藤くんが私の手首を握る。

「ふぁあっ! なに!」

超ビックリして振り返る。

「あの…ありがとう」

遠藤くんが真顔で言う。

「ど、どういたしまして」

私は笑顔で返事する。

多分、引きつってたと思うけど。

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