第5章 ねぇどっち? 前編
生徒手帳は、高校に着いたら届けようと持ってきた。
てか落とし物ってどこに届けるのかな?
生徒会室? 事務室?
ていうか、どっかで見たことあるようなないような人だったなぁ…
同じ一年生だったら直接渡しちゃうかな、と中を開いて身分証明の欄を見てみる。
……。
同じクラスの人じゃん!
…
生徒手帳の持ち主は同じクラスの遠藤くんだった。
名前と顔を見れば、
あぁ…
って、なんとなくわかるけど、話したこともないし気づかなかった。
私は自分の教室に着き、中を見渡す。
えっと…遠藤くんてどの辺りの席だっけ。
あ、いた。壁ぎわの席で本読んでる。
「遠藤くん」
私は彼の横に立ち、声をかける。
彼は顔を上げない。
聞こえてないの? てか、この人遠藤くんだよね?
「遠藤くん」
私はもう一度、声をかける。
彼は顔を上げて、周りをキョロキョロ見る。
のに、私のほうは見ない。
「あ、あの…遠藤くんじゃないの?」
不安になってきた。
「俺? 遠藤だけど…」
彼が目を合わせないまま答える。
なら、サッサと返事しろよ!