第5章 ねぇどっち? 前編
駅まで走って、なんとかいつもの電車に乗れた。
高校の最寄り駅で降りる。
はぁ…何も食べてないし…走ったし…
お腹減ったなぁ
とりあえず、おしるこかカフェオレでも飲もうかな。
駅の自販機で甘いものを物色する。
あれ…小銭ない。
千円札崩すか…
うぅ…お小遣いが心もとない…
隣のSuica自販機で同じ高校の男子が買い物してる。
そうか、私もSuicaにチャージして買い物するかな
なんとなく思いながら、自分も商品を選ぶ。
隣の男子はピッてして、あっという間に買い物をして去っていった。
おぉ、さすがSuica…ってあれ?
紺色の表紙の小さな手帳が、隣の自販機の前に落ちてる。
うちの高校の生徒手帳だ。
こんなのさっきまでなかった…さっきの男子のかな?
「あのー! 落ちましたよ、手帳」
彼の背中に声をかける。
ダメだ。全然、気付いてない。
追いかけるか。
とりあえず、手帳を拾う。
私の買ったジュースがガコンと取り出し口に落ちる。
よし、これを取ってお釣りを取って…
カシャン…カシャン…カシャン…
100円玉が1枚ずつ落ちてくる音がする。
なんでこんなときに限って、全部100円玉で戻ってくるのよ!
お釣りを受け取り、ジュースと生徒手帳を持って、追いかけようと思ったけど、彼の姿は見当たらなかった。
だいたい、どんな人かも覚えてないし…
なんか特徴のない人だったなぁ…