第4章 渡り廊下で恋をした
木曜。
僕はいつものように予鈴の鳴る少し前、化学室を出る。
渡り廊下を渡る。
……。
あの子といつも一緒に歩いてる子がひとりで歩いてきた。
今日はあの子休みなのかな…。
一週間にたったひとつの楽しみが。
僕は少し寂しくなる。
でもどうせ。
どうせ交わることのない、僕と君の世界。
明るい太陽の光が降り注がない僕の世界。
…
教室に戻ると、僕の席の周りで運動部の女子たちがお菓子を食べていた。
席替えで溜まり場が変わったようだ。
僕の椅子にも女子が座ってる。
短いスカートで行儀悪く足を組んでいるからパンツが見えそうだ。
悪いけどどいて、って言わないといけないのか。面倒だな。
僕は小さくため息をつき、自分の席に向かう。
「あっ、ごめんごめん。イス借りてた」
僕の椅子に座ってた女子が、僕の顔を見てサッと立ち上がる。
「…別に」
そう答えて、僕は自分の椅子に座る。ちょっとあたたかい。
意外だな。席替えしたばかりなのに、ここが僕の席だって知ってたんだ。
「食べる?」
別の女子が、上が開いたポッキーの小袋を差し出す。
「…ありがとう」
僕は一本受け取り、礼を言う。そしてそれをかじる。
予鈴が鳴ると、彼女たちはワァワァ騒いでお菓子を片付け始める。
小袋に残ったポッキーを手分けして口に放り込む。
「はい! 横山もっ」
最後の一本がピョコッと飛び出たポッキーの小袋を僕に差し出す。
僕はその一本を受け取り、口に入れる。
その子は満足そうにニッコリと笑った。