第4章 渡り廊下で恋をした
次の木曜。昼休み。
今日は君に会えるかな。
僕は時計を何回も見て、タイミングを見計らい、化学室を出る。
渡り廊下。
君がひとり。ひとりで歩いてくる。
今日は友達が休みなのかな…。
太陽の光が降り注ぐ。
君に。
僕に。
「あの…こんにちは」
僕は立ち止まり、君に声をかける。
君も足を止め、顔を上げる。
「こんにちは…えっと…」
君は少しためらいがちに挨拶を返す。
「僕は2年E組の横山宏樹。化学研究部なんだ。君、化学に興味は?」
「へっ? 化学?」
僕の言葉に君が笑う。
「化学研究部って、化学を研究するんですか? ウケるー」
君の笑顔をこんな間近で、正面から見たのは初めてだ。
僕は嬉しくなる。
「あの…君の名前を聞いてもいいかな」
君は僕の顔を改めて正面から見直し、ニッコリと微笑む。
優しく明るい微笑みを僕に向ける。
「はい。私は1年A組、田中ゆうです」
fin