第1章 好きって言って
紙芝居が終わる。
直樹がこっちに向かって歩いて来た。
「直樹」
私はそっと声をかけてみる。
「…ゆうちゃん」
直樹はちょっと顔を赤くしてうつむいた。
私は尋ねる。
「紙芝居見に来たの?」
「う、うん。中学生にもなって恥ずかしいよね…」
「別にいいんじゃない? 私も今日ひさしぶりに見たけど面白かった」
「面白いよね?」
直樹の顔がぱぁっと明るくなる。
笑った顔は小さいときと変わらないんだ。背は私よりちょっと大きくなったのに。
私も思わず笑顔になる。ちょっと思いついて誘ってみる。
「一緒に絵本読もっか」
「うん!」
直樹は嬉しそうに頷いた。
…
「面白かったね、絵本」
「うん。いっぱい読んじゃったね」
図書館の外の自販機でジュースを直樹と一緒に飲む。
閉館時間までいろんな絵本をいっぱい読んだ。
子供のとき、一緒に読んだ絵本もいっぱい。
私は子供のとき、直樹と遊ぶのが大好きだった。
というよりも…優しい直樹のことが好きだったのかな。
小学校の高学年くらいになると、なんとなく遊ばなくなっちゃったけど…
こうやって、一緒にいるとやっぱり楽しいな。
「…直樹、テレビゲーム得意だったよね? まだ得意?」
私はちょっと思い立って聞いてみる。
直樹は唇に人差し指をあてて、ちょっと考える。
「そりゃーゆうちゃんよりは上手だと思うよ。今でも」
「…弟がね、なんかどうしても出来ないとこあるって毎日うるさくて。直樹なら出来るかなぁ」
私はテレビゲームの説明をする。
「あ、それなら俺も持ってるよ。余裕」
「やっぱり? じゃあ、明日家に来てくれない? 弟に教えてあげて」
「うん、いいよ。ゆうちゃん家に行くなんて超ひさしぶりだね」
「だねー」