第1章 好きって言って
この春、私は中2になった。
ていうか、まだ春休み。
中2の勉強もまだしてないし、新しいクラスも決まってないから、まだ2年になった実感はない。
春休み、暇を持て余していた私は、ひさしぶりに市の図書館に行ってみることにした。
…
入り口をくぐり、静かなロビーに入ると、もう古い本の匂いがする。
懐かしい。小学生のときは友達とよく来たなぁ。
絵本のコーナーに子供が集まってる。
今日は紙芝居の日なのかな?
紙芝居も弟を連れてよく見にきたなぁ。
まあ、私も楽しんでたけど。
紙芝居を見ている子供たちの後ろに、ちょっと大きい男の子が立ってる。
中学生? あの子も弟か妹の付き合いかな。
中学生になって紙芝居に付き合ってあげるなんて、優しいお兄さんだな…
って、あれ? 直樹?
…
直樹は同じマンションの同い年の子。
幼稚園も小学校も中学校も同じ。
優しくて絵本が好きな直樹とは、幼稚園のときは超仲良しだった。
小学校低学年ぐらいまではよく家を行き来して遊んでた。
テレビゲームが上手で、うちの弟ともよく遊んでくれたっけ。
直樹はひとりっ子だったはずだけど…
紙芝居を見る子供たちの輪の後ろにいる直樹の、さらに後ろから、私はその様子を眺める。
熱心に紙芝居に聞きいる子供たちと同じように、直樹も熱心に聞き入っているみたい。
もしかして…直樹、紙芝居見に来たのかな?