第3章 いいよ。
「えっ…と…僕の顔に何か付いてますか…?」
彼がちょっと引き気味に、私の顔を見て尋ねる。
あっ、ガン見してたのバレちゃったかな?
「えっと…うふふ。さっきから気になってたんだけど、村上くん、唇の端にチョコ付いてる。さっき食べたからかな」
私はとっさにごまかす。
チョコ付いてるのは本当。ほんのちょっとだけだけど。
「えっ、本当ですか?」
彼は少し顔を赤くして、自分の指で唇をこする。
「そっちじゃないよ。反対側」
私は彼の唇を指でそっとこする。
「あっ…」
私は彼の唇の柔らかさにビックリして、思わず手を引っ込める。
「取れましたか?」
首を傾げて、彼が尋ねる。
「う、うん。取れたよ。ていうか…村上くんの唇、柔らかくてビックリしちゃった…ふふ」
私は照れ隠しで笑う。
「え…柔らかい? 普通だと思いますけど…。あぁ、自分の身体よりも人の身体のほうが柔らかく感じるんじゃないですかね…」
うーん…と考えながら、彼が答える。
「そうなのかな。どう考えても村上くんのが柔らかかったけどなぁ」
私は自分の唇を指でさわって確認してみる。
「そんなものですよ。僕も小学生のとき、友達と頬を触り合って確認…」
彼が私の頬を一瞬、指でツンツンして、サッと引っ込める。
「ご、ごめんなさい…。話に夢中でつい触れてしまいました」
彼が少し顔を赤くして謝る。
あ…意識してる…?
チャンス? 追い打ちを…。