第1章 好きって言って
あのことがあってから、私は直樹の部屋に行かなくなった。
それどころか電話もしない。メッセもしない。
別に無視してるわけじゃない。
直樹がしてこないから。
私からしたくないわけじゃないけど…
なんて言ったらいいかわからないから。
「あのこと気にしてないよ。また一緒に勉強しよ」
なんて、私は言いたくない。
だってめちゃめちゃ気にしてるから。
家で1人でいると、しょっちゅうあのことを思い出してしまう。
直樹の唇と…身体の感触…忘れられない。
私は彼氏でもない男の子にあんなことされて嫌じゃなかった。
それは…私が直樹のことを好きだから。
直樹はどうなの?
私は、直樹がもし私のこと好きなら…何をされてもいい。
でも『How to SEX』してみたいだけなら、そんなの嫌だ。
「ごめん」って…
やっぱりそういうことなのかな…。
…
2学期が始まった。
学校行って、部活して、宿題やって、学校行く普通の生活が始まる。
私は「あんなことすっかり忘れた」みたいなフリして普通に学校に行く。
といっても、そんなこと知ってるのは私と直樹だけだけど。
直樹も普通に学校来て、普通に勉強してる。
もう宿題はあんまり忘れなくなったみたい。
机もちゃんと片付けてるのかな。
私はどうしても気になっちゃう。
…
もうすぐ2学期の中間テスト。
直樹はちゃんと勉強出来るかなぁ。
自分の心配もしないといけないのに…。
私は直樹のことばかり考えちゃう。
直樹と話したい。