第2章 sugar.1
いつもよりほんの少しの余裕を持って家を出る。
隣を見ればすっかり女の子になった歩がマフラーに顔を埋め、寒いと呟いている。
二つ結びの髪がふわふわと揺れ、そんな姿を横目に見ながら俺は息を吐いた。
歩にとっては数週間ぶりの学校。
「……真澄」
「ん?」
ぽそっと名前を呼んだ歩に返答すると、数秒の間をあけて何でも無いと呟く。
久々の学校に緊張してるのか?
しかしそれ以上言葉を紡ぐことは無く、二人肩を並べて、俺達は学校までの道のりを歩いて行った。
空に浮かぶ雲の切れ目から覗く太陽の光が俺達の道を照らしている。
その光を見つめながら、戻れない所まで来てしまったんだと…俺は強く実感した。