第2章 sugar.1
お湯が沸くまでの数分がとても長く感じる。
何をして時間を潰そうかとソワソワしている俺を見て、歩が小さく笑う。
「何笑ってんだよ…」
「ううん。…ね、真澄…こっちおいでよ」
くすっともう一度笑った歩は、俺にそっと手招きをする。
ソファーに座っていた体をこちらに向けて、袖に隠れた手のひらでマグカップを持ち、片方の腕を背もたれの上に置き、その上に顎を乗せている。
そうして誘うように俺を見つめているのだ。
なんでこんなにもリズムが乱されてしまうのだろう。
年下の男に…。
男に抱かれるなどと言う初体験をしたからだろうか…。
タイミングよくお湯が沸くことは無く、俺は視線を彷徨わせた後で歩の方へと足を進めた。