第2章 sugar.1
「おかえり真澄。体、温まった?」
こちらに気づいた歩がソファーの上から俺を見つめる。
「…ああ。お前も入れば?」
「んー、俺は後でいいよ」
ダボっとしたシャツを着た歩。
袖に隠れた両手でマグカップを持ち、ソファーの上で体育座りをしているその姿に変に緊張が走る。
少し袖から見える指先、襟元が広いそこから覗く鎖骨、下ろされた髪の毛の隙間から見える真っ白な首筋。
“…あっ、真澄っ…”
情事の最中の歩の切なげな声を思い出して、カッと顔に熱が集中するのを感じた。
「真澄…顔赤くない?」
「いや、のぼせただけ…」
じっとその姿を見つめていた俺の視線と歩の視線がバチっと合い、鋭い指摘が飛んでくる。
俺はすぐに顔を背けて、誤魔化す様に電気ポットに水を注ぎ、電源を入れた。