第2章 sugar.1
あの女の子は、今何をしているんだろう。
年も名前も知らない。
なのに無性にその子の事が気になってしまった自分に苦笑を漏らして、俺は湯船から体を出した。
「…生きてるなら、それでいい」
世の中の全てを諦めてしまっていた、光が届かない程に暗い瞳の色。
やけに細く、病弱な体。
真っ白な肌に色ずく青紫のあざ。
ふと思い出した彼女の姿が深く頭に刻まれていくのを自覚しながら、俺は風呂場を後にした。
体についた水滴をタオルで拭い、新しい服に袖を通した俺がリビングに行くと、そこには先ほどの事など何もなかったとでも言いたそうな歩の姿。
やけにけろっとしてマグカップの中のカフェオレをすすっているものだから、俺も深く追求することは出来なかった。