第2章 sugar.1
温かいお湯の中に体を沈める。
自分の体温よりも高い温度のお湯が、皮膚を通って体に染み込んでいく感覚。
「…はーっ…」
ちゃぷんと湯船の水が揺れる音を聞きながら、俺は閉じていた目をゆっくり開いた。
まだ下半身が疼いているように感じる。
言うなれば余韻…と言うものだろうか。
口元がお湯に隠れるくらいまで体を沈ませ、薄く開いた唇の間から空気を吹き出せば、ぶくぶくと泡になり湯船に波紋を立てる。
しばらく無心で唇から発生させた泡を眺めていたが、ふと…昔の記憶の欠片が頭にチラつき、俺はゆっくりと体を起こした。
……遠い昔、と言えば言い過ぎかもしれないが。
まだ俺が中学生だった時、確かこんな体験をした事がある。
薄暗い路地裏。
もう顔も覚えていない誰かが過呼吸を起こし、地面に崩れ落ちそうになる体を抱きしめた事。