第2章 sugar.1
「…はーっ。…はーっ」
一定のリズム、呼吸音。
「歩…大丈夫か?」
「ん。…ごめん。久しぶりに油断した」
体を俺に預けたままで口を開く歩は、一点を見つめたままゆっくりと呼吸を繰り返している。
“久しぶり”と言うことは、前にも過呼吸になったことがあると言うことなんだろう。
「…真澄、風邪引くよ?」
「は…?」
膝の上で俺の顔を下から見上げる歩がニヤリと笑い、その指先が首筋から鎖骨をなぞるように滑る。
ビクッと体を引いた俺は、自分が何も着てないことに気がつく。
いや、何も着てないと言っても上半身だけだが…。
自分が裸だと認識してから寒さを感じた俺の体が小さく身震いをした。
「真澄、お風呂入ってきたら?…俺はもう大丈夫だから」
体を起こした歩がにこりと有無を言わさない笑顔を浮かべたので、俺は大人しく風呂に入ることにした。