第5章 すれ違い
「えっ…す、すみません…。」
「気にすんな。死んだわけじゃねぇから。」
「ど、どういう事ですか?」
「まぁ死んだようなもんって事かな。
病院に寝たきりなだけだ。」
「…、…。」
「俺が勝手に喋ったんだ、いいんだよ。な?」
そう言うと俺は自然に栗橋の頭に手をやる。
すると視界が突然変わり天井になる。
「どうしてっ…そうなんですかっ!」
「突き放したかと思えば…っ優しくて!」
「くり、はし?お前…。」
温かな雫が俺の頬へと落ちる。
いつもは長い前髪で見えない瞳が
潤みながら見つめている。
「俺はっ!負けたくない…あの人に…っ。」
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