第5章 すれ違い
「ちょ、負けるとかよく分かんねぇけど
落ち着けって!な?」
覆い被さる栗橋の背中に腕を回し、
ぎゅっと抱き締めた。
嗚咽混じりに俺の肩を濡らすのを横目に
頭をそっと撫でる。するとふわっと、
いつか嗅いだ爽やかな香りが鼻をかすめる。
暫くすると安心したのか静かに
寝息をたて始めた。
おいおいずっとこのままかよ…。
だが栗橋の重みは俺を安心させていた。
誰かが傍にいるという事。
家にはいつも一人で誰かがいた事もない。
部屋に人を呼んだ事もない。
俺、ペース持ってかれすぎ?
なんて色々考えていたのに気付けば
また眠りに誘われていた。
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