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ブーゲンビリア

第1章 突然の来訪者




『驚くのも無理ないわよね。お母さんはとっくに聞かされてるんだと思ってたわ。それを承知で、それを前提で貴女の一人暮らしが許可されたのよ。だから部屋数は多いし広いでしょう?』
「なにそれ!聞いてないよ!」
『貴女の社会勉強にもなるから一人暮らしを勧めたのは本家だけれど…。よく考えてみなさい。危険な世間に何の制約もなしに、貴女を放り出すと思うの?』
「…そりゃ、そうかもしれないけど…っでも!」
『本家の企みはそういう事よ。あそこは貴女の安全を第一としているけれど、ちょっと強引なのよね。』
「ちょっとどころじゃないでしょ…。」
『大学入学は取り消せないし、マンションの契約解除もすぐには出来ないわ。だからどう反発しても足掻いても、貴女はそこで彼と暮らして生活するしか道はないの。』
「本家に申し立ては出来ないの…?」
『出来なくはないけど、通らない可能性が高いわね。本家が何も考えなしに彼を送り込むとは思えないもの。』
「そんな…。」
『今回の件はお母さんもちょっと強引過ぎると思うわ。だからその旨は伝えておく。でも、』
「?」
『朔夜君って確かすごく格好良い子でしょ?花の女子大生生活、楽しんだもの勝ちよ!』
「…お母さん…。」

つくづく、この本家にしてこの母有りだと思う。短いようで長いようで、私からすれば驚きを通り越してもはや話についていけないような状況だけど、無情にも母は電話を切ってしまった。もっともっと聞きたいこともあったし、言いたいこともあったのに!深く深く溜息を吐きながら電話を握り絞めれば、存在を忘れかけていた篝さんがおずおずと話しかけてくる。

「…あの、大丈夫ですか…?」
「…大丈夫じゃないです…。」

ずーんと効果音が付きそうなほど落ち込む私に慌てたようにしていたが、私の吐く深い溜息に少しだけ悲しそうな表情をしたあと、首を傾げる私に目尻を下げて笑いかけた。

「だいたいの状況は把握しています。めぐみ様が困惑するのも当然だと思います。僕の様な人間と共に生活をするなど耐え難い苦痛かと存じますが、どうかご容赦ください…。」



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