第6章 告げられた想い
何故だか私も泣きそうになってしまって、ぎゅっと同じように朔夜に抱き付く事で紛らわす。ただただ私を抱き締め「愛している」と囁き続ける朔夜が落ち着くまで、私達は玄関でずっと抱き合っていた。どれくらい経っただろうか、漸く落ち着いてきた朔夜は我慢ならないように私に告げる。
「っめぐみ様、」
「え、わっ!」
そのまま膝裏に手を回されて、俗にいうお姫様抱っこをされてしまう。ビックリして固まり徐々に顔を赤くする私に数度頬ずりしてから、朔夜は急くようにリビングを抜けて自分の部屋へと私を運び込んだ。初めて入る朔夜の部屋は整理整頓されていて、あまり生活感が無い。そんな事を一瞬考えるが、まるでガラス細工に触れるかのように優しくベッドへと降ろされる。靴を履いたままである事を思い出し不自然な格好する私に気が付いたようで、そっとその綺麗な手で丁寧に靴を脱がされる。まるでどこかのお姫様になったように錯覚してしまう手付きだった。
「めぐみ様…。」
そっと朔夜がまた覆いかぶさってきて、ベッドの上で二人で抱き合う。今の状況にただただ赤面して固まる私を更に愛おしそうに見つめた後、ゆっくり口を開く。その間も、私の身体を確かめる様に撫でる腕は休めない。
「あの男性は…?」
「…あ、えっと、同じサークルに入る同級生で、今日は送ってくれて…。た、ただの同級生だよ!今日が初対面!」
「では、どうしてあのような状況に?」
「そ、それは私もよく分かってなくて。その、気が付いたら…、でも!何もないの!ほんとに!」
「…良かった…。」
心底安心したように私を抱き締めて味わう様に髪に顔を埋める朔夜の言葉の意図が解らず、ドギマギしながら首を傾げる。朔夜は少しだけ困った様に目尻を下げて、愛おしそうな手付きで私の頬を撫でながら、続ける。甘い甘い雰囲気に、酔ってしまいそうだった。
「めぐみ様がオレ以外の男と一緒に居るだけで、嫉妬で狂ってしまいそうなのです。あのまま声を掛けなかったらと思うと、ぞっとします。でも、今からめぐみ様は、オレのものだ…。」
告げられた言葉のあまりの衝撃具合に何も言えない私に申し訳なさそうに笑ってから、更に言う。「こんなオレで、幻滅しましたか」と。そんなの。
「そんなわけない。私には、朔夜だけ…。」