第6章 告げられた想い
私の発した言葉に今度息を止めるのは朔夜の番だった。はっと目を見開いた空気が伝わり、固まる。緩まった腕の力を感じ、そっと見上げて私よりずっと上にある朔夜の両頬を両手で包む。思えば、こうして自ら朔夜に触れたのは今が初めての様な気がした。つくづく自分も不器用だと、心中で苦笑する。それでも。
私以上に不器用で真っ直ぐに想いを伝えてくれるこの人が、私は好きなのだ。
「朔夜。」
「…っめぐみ、さま…?」
「好きだよ。私。朔夜の事、好きだよ。」
「なにを、」
「一人の男の人として、好き。」
しっかりと自分と顔を向き合わせると、朔夜が泣いている事に気が付いた。綺麗な綺麗な透明な涙だった。はらはらと流しながら、驚きに見開いた目に私を映している。信じられないと頭を振る彼に、生まれて初めてする異性への告白だと言うのに、私の心は落ち着いていた。今はとにかく、目の前で情けなく体を震わせるこの人が、愛しい。
「だからそんな風に言わないで。諦めないで。価値がないなんて、言わないで。」
「っ、」
「私は、そのままの朔夜が好き。お願いだから自分の事、蔑にしないで。初めにも、言ったでしょう?」
「朔夜、好きだよ。」
目と目を合わせて、微笑みながら告げた私の身体は、次の瞬間には痛いほどの抱擁で包まれていた。今までにないほど強く強く抱き込む朔夜は、力で自分の想いの強さを誇示する様で。涙を流しながら、肩を震わせながら、必死に確かめる様に私に縋る朔夜がとても小さく見えて。今まで抱き締められることはたくさんあったけれど、この夜初めて私は自分から朔夜の背に自分の腕を回した。その事に気付いた朔夜がまた大きく身を震わせ、譫言の様に呟く。
「っ愛しています…愛しています…めぐみ様…!愛しています…!」
「うん。…うん。…うん。」