第4章 入学式
よく、分からなかった。飲み物の味も、周囲が口々に言う気遣いの言葉も、ぐるぐる回る視界も、ぼんやりする世界も。冷たい飲み物を流し込んだはずなのに胃が焼ける様に熱くて、うなされる様にパタリと倒れた。ああ、まずい。起きなきゃ。そうは思っているのだが、どうにも体が動かない。瞼が重く、起きていられない。意識はあるけど、ふわふわする。なんだろう、これ。内心焦っているのにそんなのもどうでも良く思える程に何もわからなくなって、気が付いたら意識は途絶えていた。
「…ん。」
ゆらり。ゆらり。ふらふら揺れる感覚に目を開ければ、感覚通りに視界は少しずつ動いていた。一瞬状況が把握できず、固まる。ゆっくり自分と周囲を見回し、誰かにおぶさっている事を把握。そして意識が途絶える前の状況まで思い出した時、ズキッと頭が痛んだ。
「あ、起きた?」
「山本くん!?」
私が頭を抱える動きで起きた事に気付いたらしい人物は、くるりと振り向く。私を背負ってくれていたのは、飲み会ですぐ隣に座っていた山本くんだった。ワタワタと慌てる私の様子を見かねて、説明をしてくれる彼はとっても丁寧な人なんだろう。どうやらソフトドリンクと間違えた私が煽ったのはお酒で、それなりに度数の強いものだったらしい。そのままパタリと眠ってしまい、飲み会はお開きになったが私を置いていくわけにいかず、話の流れで家が近い山本くんが背負って送ってくれる流れになったらしい。
穴があったら入りたい程の羞恥に襲われ、思わず二の句が告げない。とりあえず彼に謝れば、からりと笑って流された。