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ブーゲンビリア

第4章 入学式





だからだろうか、無意識に何度も見ていた腕時計から顔を上げさせるように、目の前の男の子が尋ねる。同じ新入生の、確か山本くんだ。気遣うような物言いに、家は遠いのかとかとか、実家暮らしなのかとか、いろんな事が含まれている気がした。

「あ、いや、そういうわけじゃないよ。」
「そっか。さっきから時間気にしてるからさ。心配性な彼氏でもいるのかと。」
「か、かれし!?」

自分に言われた慣れない単語に大袈裟に反応してしまう。すれば面白がるように、周りの先輩達が冷やかす様にからかってくる。一瞬浮かんだ顔を必死に消し去りながら、何とか誤魔化す。

「なになに、めぐみちゃん彼氏持ち?」
「ち、違いますよ!」
「えっ、じゃあフリーなの?」
「まじで?」

いつの間にかわらわらと集まってきた先輩達。奥の方で見ている同じ新入生の女の子も面白そうな顔つきだった。所謂恋バナというものに無縁な私は、単語一つ言うのにも照れてしまって焦ってしまう。そんな初心な私の反応を見て、先輩方は益々からかうように続ける。

「えーめぐみちゃん美人なのに。もったいねー。」
「びっ!?」
「あ、じゃあオレ候補に挙手していい?」
「えっ!?」

先輩方はお酒も入って楽しそうに会話をしている。それにひたすら翻弄されている私。からかわれている事は分かっている。痛いほど分かっている。美人なんていうのもお世辞だってちゃんと分かってる。でも照れてしまうのは、免疫がないから。顔を真っ赤にする私は恐らくかなり滑稽だろう。人好きするような笑みを浮かべて近付いてきた男性に余計に慌てて、とりあえず顔の熱を冷まそうと手近な飲み物を慌てて口に運ぶ。一瞬変な味がしたので眉を寄せたが、自分が話の中心に居る事が恥ずかしくて誤魔化す様に飲み物を煽った。すれば、周りから焦ったような声が聞こえる。

「ちょっ、中山ちゃん!それ酒だって!」
「ええええ一気!?」
「だ、大丈夫!?」


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