第3章 ショッピングモール
淀みなくさらっと答えられ、言葉を失う。今私は確かに留守番を頼んだはずなのだが。どうして一緒に出掛ける話になったのか。一瞬で、彼が何のために私のところへ来たのかを思い出す。私を守るためだ。確かに引っ越して一日で慣れない場所を出歩くのだから気持ちは分かるが、海外の様に治安が悪いわけでもないので私は無用だと思ってしまう。彼は仕事なのだろうが、私は気晴らしのためにも出掛けようと思っていたので、申し訳ないがお断りする。
「大丈夫ですよ。今の時間帯なら人通りも多いですし、すぐ近くですから。それに、これでも私は護身術もちゃんと身に付けてます。そんなすぐに襲われたりなんて、しませんから。」
安心させるように微笑んだのに、何故か辛そうな表情をされてしまった。何か可笑しな事を言っただろうかと、内心で首を傾げる。それが表情に出ていたのだろう、篝さんは無言の問いに答えるように首を横に振った。
「僕はめぐみ様の身を護るために此処に来ました。それが例え無用な心配だったとしても、不要だとは思って欲しくないのです。」
「…え?」
「僕は、朝も言った様に僕自身が望んでめぐみ様のお傍に居ます。あなたのために生きています。ですから、めぐみ様が対処できるとはいえ、その様な状況下にしてしまう可能性があるのなら、どこまででもご一緒させていただきます。」
「…………。」
開いた口が塞がらないとはこの事だ。
つまり、篝さんは私が襲われるかもしれないという事自体が問題なのではなく、自分が共に居れば防げるであろう状況に陥って私が危険にさらされてしまう事こそが嫌なのだと言う。例え私が一人で対処できたとしても、危険が及ぶとわかっていながら、防げたにもかかわらずそれを容認してしまう事が嫌なのだと。だから、どこへでも共に行く、と。
どこまで仕事熱心なんだろうとポカンと見上げる私にそっと微笑んで、続ける。
「…それに、」
「?」
「少しでもめぐみ様と同じものを共有したいのです。僕の知らないめぐみ様が居る事が、今はただつらい。だから、もっともっとめぐみ様の事を知りたいのです。ステータスではなく、あなたの、こころを。」
「!?」