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ブーゲンビリア

第3章 ショッピングモール



朝食を食べ終えてから、私は出掛けるための支度をしていた。本当は食器を片付けようとしたのだけれど、全力で篝さんに拒まれてしまったのだ。朝早くから起きてあんなに豪華な食事を作ってくれたのだから、せめて片付けくらいはしたかったのだけれど…断固として首を縦に振ってはくれなかった。そこまで頑なに拒まれてしまうと、自分がやろうとしている事は迷惑なのかと思い始め、渋々引き下がるしかなかった。今までの言動を思い返す限り、篝さんは迷惑と思ったりはしなさそうだけれど…。家族以外と一緒に暮らした事も、他人と不本意とはいえ同じ屋根の下で夜を明かした事もない私。人との密接な関わりから遠ざかっていたせいだろうか、余計に深く勘ぐってしまう悪癖は抜けなかった。

気を抜けばどんどんマイナスな方向へ向かってしまう思考をどうにか押し留めて、動き易い服装に着替え、軽くメイクを施す。髪を梳かしてセットし、引っ張り出した姿見を確認すれば終わりだ。不自然なところはないか要チェックしてから、部屋を出た。

今思えば私一人が住むにはとてもじゃないけど広いこの部屋。リビングルームの他に個室が二つあり、そのうちの日当たりのよい部屋が私の自室となった。もう一つは、当然篝さんの部屋である。リビングに山の様に積まれていた段ボール達は、昨日のうちに粗方片付いてしまった。一人であったならもっと時間がかかっただろうが、望んでいないとはいえ、今は二人だ。篝さんも率先して引越しの片付けを手伝ってくれたおかげで、部屋には越して一日だと言うのに生活感が出た。

扉を静かに閉めて、もう一つの扉の前で立ち止まる。何故か緊張する自分の胸を押さえて、ノックを三回。名前を呼べば、すぐに扉が開いた。

「めぐみ様!どうかされましたか?」
「あ、これからちょっと出掛けようと思ってて…。その、お留守番、頼めませんか?」
「…不躾な事をお伺いしますが、どちらへ?」
「えっと、近くのショッピングモールまで…。」
「僕も行きます。」



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