第2章 目が覚めて
「めぐみ様は朝食はあまり多く食べられない方だと存じていたのですが…。申し訳ありません。ご一緒出来る嬉しさのあまりついつい作り過ぎてしまって…。残ったら冷蔵庫に入れますので、どうかご無理をなさらない程度に食べていただけたら幸いです。」
照れた様に頬を染めながらはにかむ彼にどう反応していいか分からず、とりあえず色とりどりに散りばめられた食欲をそそるそれらの朝食に手を合わせた。うん、朝食に罪はない。いろいろと突っ込みどころが満載な彼だが、最早突っ込む気力も私には無かった。もぐもぐと咀嚼するが、その美味しさについつい箸が伸びる。彼が言う様に、私は朝はあまり多くは食べられない。それでもそれを上回る料理の腕前だった。さすがにこうも所狭しと並べられても、消費は出来ないが。これは冷蔵保存に回そうと、幾つかは手を付けずにもそもそと食べ進めていく。
意図せず彼と同居する事になってしまったが、私は歩み寄る態度など一度も見せたためしがなかった。その気がない、と言ってしまえばそれまでだが、どうにも納得が出来ないのだ。彼は私を護る為に来たと言う。しかし、私には彼が必要だとはとても思えなかった。朝食を作ってもらってそれを美味しくいただきながら考える事ではないと思うが、私は彼に朝食を作ってほしいと頼んではいない。いわば、彼が好んで勝手にしたことだ。そもそも、私は自分の身を護れる程度の力位はあると自覚している。今までの人生でそれを覆された事は無かったし、またそれが誤った認識だと思わされる出来事も無かった。
だからこそ今の状況に、言い方は悪いが―――不満を抱かないわけにはいかず。それでも自分のこのモヤモヤした感情を、目の前で私が朝食に手を伸ばす度にニコニコ笑う彼にぶつけるわけにもいかず。余計にモヤモヤのスパイラルにはまってしまう自分の思考を押し留める事が今私がしなければならない事だった。溜息を吐きたいのは寸前で抑え、目が合う度に微笑まれる彼にぎこちなく微笑み返す私を誰が労わってくれようか。口を開けば幸せが逃げていきそうで、どうにかせねばととりあえず詰め込めるだけ朝食を詰め込んだ。栄養バランスが考えられているのだろうそれらは本当に美味しくて。こんな状況でなければもっと喜べたのに、と思ってしまう自分を叱咤し、ごくりと呑み込んで彼に問うた。