第2章 役割分担と買い物をしましょう
*夜神side*
夜神と江島が別れる数十分前。
「……江島は甘いものが好きなのか?」
幸せそうに、棚に陳列している菓子を見ている江島に、思わずそう訊いてしまった。
江島は一瞬キョトンとしたが、にっこりと微笑み、頷いた。
「えっと……はい。甘いものが好きなんです」
「そうか」
優しげに口元を綻ばせる江島に、動揺した顔を見せないよう目の前の文房具に視線を移す。
色とりどりのボールペンやシャープペンシルが、俺に『まだまだだな』と言っているようで、地味に腹が立った。
▼◇▲
店の外で待っていると、江島がパンパンになった買い物袋を2袋両手に持って出てきた。
「……沢山買ったな」
呆れたように呟くと、江島は首をかしげて「んー……いっぱいあったら楽しいかなって」と言った。
まあ、いいだろう。それより女子に全部持たせるわけにはいかない。
「半分持つぞ」
俺が手を袋に伸ばすと、江島は遠慮したように半歩後ろに下がった。
「えー? いいですよ。私が一人で持ちますから」
……そう来たか。
普通、男がこう言ったら女は渡すものだと思っていたが。
いや、江島は『普通』の女か? 天然で鈍感だからこういった反応は当たり前なのかもしれない。
江島自身も、純粋に俺に悪いと思って遠慮しているんだろうが……。
「いや……それでは俺の面子が立たないというか……」
しどろもどろと言うが、江島は不思議そうな顔をしている。
これはかなり気まずい。と、携帯の着信音が鳴った。
俺が使っているものではないから、江島の携帯からだろう。
江島は買い物袋を足下に置くと、ポケットから古そうなガラケーを取り出す。