第2章 役割分担と買い物をしましょう
「そうか」
夜神先輩はそれだけ言うと、また文房具を手に取り始めた。
……なんで、そんなこと訊いたんだろう。
▼◇▲
「……沢山買ったな」
夜神先輩は、私の両手に下げられた買い物袋を見て、呆れたような声を出した。そんなに沢山かな?
「んー……いっぱいあったら楽しいかなって」
「まあ、別に構わんが。半分持つぞ」
「えー? いいですよ。私が一人で持ちますから」
だって沢山買ったのは私だし、先輩に荷物を持たせるのは悪いから。
私がそう言うと、先輩は困ったような顔をした。
「いや……それでは俺の面子が立たないというか……」
「?」
私が首をかしげると、ポケットで携帯が鳴った。
荷物を足下に置いて携帯を開くと、小野ちゃんからだった。
《件名:☆男子の対処法講座☆
本文:
Q.「荷物を半分持ってやる」と年上男子から言われた時はー?
A.素直に渡す! じゃないと相手は返って困るし、落ち込むっすよ!
ではではー》
「へー、そうなんだー」
小さく呟くと、先輩が「何がだ?」と訊いてきた。
「小野ちゃんからなんですけど」
先輩にメールを見せると、一瞬だけ先輩の顔が強張る。
だけどすぐにいつもの無表情に戻ると、何かを考え込むように顔を伏せた。
「ちょっと待ってろ」
「? あ、はい」
先輩は私にそう言うと、あたりをきょろきょろと見回しながら、建物の陰に消えていった。
「どうしたんだろう?」
急にどこかへ行っちゃうなんて……。
先輩の申し出を断っちゃったからかな? あとで謝っておこう。
「すまん。待たせたな」
ボーっと考えことをしていると、夜神先輩が戻ってきた。
「行くか」
「あ、はい」
先輩は、なんの躊躇いもなく私の足元に置いてあったビニール袋を1つ持つ。優しいんだな。
「あの、さっきはごめんなさい」
私が歩きながら謝ると、先輩は首をかしげた。
「何がだ?」
「いや……先輩は気を使ってくれたのに、断っちゃって……」