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Hallowe’en party

第6章 仮装をしましょうか。




「小野ちゃん、人を引っ張るのが上手くて、凄い私の憧れなんです。だから、小野ちゃんがちょっと無理なことを言っても、気にしないんです」


江島がそんなに無口だとは思わなかった。
今でも確かに江島の発言数は少ないが、それでも自分の考えは口にできているからな。
だが……江島には失礼だが、いろいろ突っ込ませてもらおう。


「『人を引っ張るのが上手い』というより、『人を引きずり回すのが上手い』の間違いじゃないのか? 小野を憧れにするのは構わないが、もっと別の人間に憧れた方がいいと思う。あと、小野の場合『ちょっと無理なこと』じゃなくて『かなり無理なこと』ばかり言っているぞ。それから、江島は気にしなさすぎだ。もっと気にしろ」


一息に話すと、江島は驚いた顔をしたが、面白そうにくすくすと笑い始めた。


「夜神先輩は小野ちゃんのことよく見てるんですね」
「よく見ないと、何をやらかすかわからないからな。現に今とんでもない衣装をさせられている」


小さくため息をつくと、江島は少し陰りのある笑みになった。普段彼女が見せる事のない表情に、なぜだか焦ってしまう。


「……江島?」


静かに名前を呼ぶと、江島はハッと顔を上げ、慌てたようにいつものおっとりとした微笑みになった。


「あはは、ごめんなさい。ちょっと小野ちゃんに嫉妬しちゃって」
「嫉妬?」
「だって夜神先輩と小野ちゃんって仲いいからなぁ……って、本当になんでもないです。気にしないでください」


にこにこ笑うが、泣きそうだぞ、小野。こんな状況だが、自分の顔が赤くなるのがわかる。
言うなら今しかないような気がする。


「……江島……俺は別に小野と仲がいいわけじゃない」
「……?」
「俺が言いたいのは……一番仲が良くなりたいのは、その……江島なんだ」


遠まわしな言い方しかできない。
江島は天然と鈍感が人並み以上だ。こんな回りくどい言葉に気付くかどうか……。
言ってしまった事に対する、一種の高揚感と後悔が湧きあがってくるが、俺の予想を超えて、江島はみるみる真っ赤になっていく。

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