第6章 仮装をしましょうか。
どうにか桜原を連れてきたようで、広めのリビングには10人前後の人間が集まっていた。
桜原は、某世界的に有名なネズミのキャラクターのコスプレ。
意外だったが、似合っていないわけではない。
本人にそんなことを言ったら、首を絞められるから言わないが。
鈴木先生はゾンビの格好をしていた。
妹が遠くの方から怯えた目を先生に向けている。
確かにリアルでちょっと怖い。
それと今更だが、教師がこんなところで何やってるんだ。本当に教師失格だな。
ハァ、と再びため息をつくと、小野と江島の姿がないことに気付いた。
「佐々野、江島達は?」
「ん? なんか衣装のサイズを直しに行ったぞ」
「そうか」
衣装直しって……どれだけ力を入れているんだ。高校生にもなって。いや、俺がこんな恰好をして言う事でもないな。
「さーてとっと。終わりましたよー!」
小野が満面の笑みでリビングに入ってくる。小野の衣装は、特に変わったところはない。
「ふふん。頑張ったっす! ……江島っちって脱ぐと凄いんすね」
後半の方、小野が小さく何かを言ったが、全力で聞かなかった事にしよう。
「ほらほら、江島っち。早く来るっす!」
「あ、うん」
江島が俺達の前に姿を現す。予想外の江島のコスプレに、俺は絶句してしまった。
「えーっと、似合いますかねー?」
おっとりと微笑む江島だが……その笑顔と服装とがミスマッチだ。
まずスカート丈。小野のメイド服の丈も短いが、江島のはもっとだ。
服についての知識が少ないが、超マイクロミニというのか。それぐらいの短さだ。
また体のラインを強調する衣装。まともに江島が見れない。とんでもない服を選んだな、小野。
「へぇ、似合ってるじゃん」
幾分ギスギスした雰囲気のとれた桜原が、目を丸くして褒める。確かに似合っているんだが……なんだこの違和感。