第6章 仮装をしましょうか。
床に転がり呻いている佐々野を冷たく見下ろすと、ピンポン、とチャイムが鳴った。
「おっ、鈴木先生か小野ちゃん達だな!?」
チャイムが鳴ると同時に佐々野が飛び起き、玄関へと突っ走る。ここが誰の家かわかってるのか? まあ、中学校からほぼ毎日来ていれば、自分の家のように過ごすのも当たり前なのかもしれないが。
小さくため息をつき、俺は父と一緒にテーブルの準備をする。
玄関の方に耳を傾けると、佐々野の興奮した声が聞こえる。
「おおぅ、皆似合ってるよ! 夜神にも見せてやれ! 夜神ー、桜原ちゃん達が来たよー」
鈴木先生より小野達の方が早かったか。
一気に賑やかになったな。
ドタドタと廊下を走る音がして、佐々野がリビングに飛び込んでくる。
「夜神、すげーよ女子陣! やっぱ仮装に力入ってるわー」
その背後から小野がぴょこん、とリビングのドアから顔を出した。こいつはなんの仮装をしたんだ。
「あれ、夜神先輩は仮装してないんすか? 駄目ですよ、ハロウィンなのに」
「そうそう、小野ちゃんからも言ってよ。夜神は恥ずかしがって仮装しなくってさ」
佐々野はまた余計なことを言う。
「まったく……。あ、自分はメイドコスチュームでっす」
ドアを開けて小野が全身を現す。
フリルのついたメイド服を着用した小野は、いつもと何も変わらぬテンションだった。
「って、桜原先輩! 江島っち! なんで来ないんすか?」
小野が玄関に向かって叫ぶが、返事が返ってこない。
江島はともかく、桜原の性格だったら恥ずかしがって来ないだろう。俺の家まで来ていること自体が驚きだ。