第6章 仮装をしましょうか。
*夜神side*
10月31日の放課後。ハロウィンの日。
本来は秋の収穫を祝い、悪霊などを追い出す行事。
まあ、今ではさっぱり宗教的な意味はなくなったが。
両親に、ハロウィンパーティーのことを話したら、なんの疑問も持たず、快く承知してくれた。
せめて「どうして?」ぐらいの質問はほしかった。
「千尋! どう? 似合ってるかしら?」
母が豹柄のタイツとミニスカートをはいて、奥の部屋から登場する。
母の背中からピンク色のドレスを着た妹が出てきた。
「本格的に仮装するなんて久しぶりの事だから……」
「…………似合ってるんじゃない?」
それしか言葉が見つからない。
妹はさておき、40過ぎた母がノリノリで仮装しているのは精神的によくないな。
「お友達や先生は来たのかしら?」
「佐々野はもうリビングに来てる。他のやつはまだだけど」
小野達は「仮装に時間がかかるから、パーティーは先にやっていてくれ」とのこと。たかがハロウィンにここまで力を入れるか?
鈴木先生は今向かっている途中。あの人は本当に仮装をしてくるのだろうか……。
わくわくと楽しそうな母と妹からいったん離れ、リビングへ行く。
吸血鬼の仮装をした佐々野が父と一緒にパーティーの準備をしていた。
「おぉ、千尋。母さん達は?」
フランケンシュタインに仮装したであろう父が「Happy Hallowe’en」と書かれた紙コップをテーブルの上に置き、笑顔を向けてくる。かなり機嫌がいいな。
「今来る。かなり仮装に力が入ってるね」
佐々野が吸血鬼の仮装をしながら、俺の前で飛び跳ねる。
「見て見て! 夜神! 小野ちゃんのチョイスなんだけどどう思う!?」
「似合わないな」
「え、マジ!?」
俺の家でも毎年やっていたが、家族がここまで本格的にするのはなかった。反応に困るしかない。
「ってか、夜神。お前、仮装しないのかよ」
「服がない」
「照れ屋だなってグハッ!?」
佐々野の鳩尾に肘鉄を食らわせる。桜原の気持ちがよく分かる。