第3章 友人との会話
*江島side*
「江島っちは好きな人いるんすか?」
小野ちゃんと桜原先輩と下校中。小野ちゃんが突然そんなことを言った。
近道の公園を通りながら、私は首をかしげる。
「なんで?」
「江島っちって恋する乙女って感じなんで」
「理由じゃないじゃん」
先輩が突っ込むが、小野ちゃんは気にしてない。
「どうかな?」
「江島っち! そういう時は恥じらいながら言うんす! 普通に言っちゃ駄目っすよ!」
「え、そうなの?」
「小野、あんた何変なこと吹き込んでるのよ」
先輩が、小野ちゃんに呆れたように言う。
「江島は純粋なんだから、余計なこと言うんじゃない」
「純粋な子を黒く塗りあげるっていうの、萌えると思いませんか!?」
「変態」
ちっ、と先輩が舌打ちしたものだから、思わずびくっとしてしまう。凄くいい人なんだけど、たまに怖い所がある。
私達は、公園の階段を下りながらもお喋りを続ける。
「江島っちと先輩は、パーティーの時に何を着るんすか?」
「えー? まだ決めてないなぁ」
「私も。ってか、本当に仮装すんの?」
「するに決まってるじゃないっすか。決まってないなら、自分が決めてあげるっす!」
「やめて。あんたに頼んだら、外を歩けない」
先輩が怯えたように小野ちゃんから少し離れる。小野ちゃんのセンスは素敵だと思うんだけどな。
「私は小野ちゃんの決めた服でいいよ」
私としては普通に言っただけなんだけど、桜原先輩はさっと青ざめて、小野ちゃんはキラキラと顔を輝かせた。
「マジッすか!? じゃあ、とびっきりの衣装を選んであげるっす!」
「江島……あんたもっと自分の意見をいいなよ……」
自分の意見を言ったつもりなんだけどな。小野ちゃんの方が私よりお洒落だし。まあいいや。パーティーが楽しみ。
そんなことを思った瞬間、ガクン、と体が下に傾いた。
階段を踏み外したんだ……!
「「危ない!」」
先輩と小野ちゃんが叫ぶ。
手すりをつかもうとしたけど、空振りに終わる。
そして、ふわりと体が浮いて―――――――――――