第1章 光が差し込む
「………」
戸を開けて入って来た蒼世は珍しく驚いた表情を見せて数秒その場を動かなかった
勿論、私たちも口を開けたまま硬直している
とりあえずこの状況をどう説明するかも難しいと言えよう
蒼世相手にどう言えばいいのだろうと思考回路が途切れそうな程動かした
「邪魔したな」
いつものように冷静に言葉を言う蒼世は戸も閉めようとせずに私たちに背を向け静かに歩き出す
蒼世の背中が遠ざかって行くように感じる
置いていかれる、もう私を見てはくれないのかと一気に増していた不安は爆発した
天火の腕を無理矢理抜けて行くと開いていた外の空間に飛び出した
「蒼世ー!!!行くな!行かないで!置いて、行かないでよー!」
広く私だけが世界に立っているように、その声は私に届く
彼に届いているかは分からない
けれど叫んでみなければ、やってみなければ伝わらないものは伝わらない
一雫、貴方のために流したものは幾度…
濡れる地面色を濃くして一心に貴方だけを見る
一瞬立ち止まっているように見える
もしかしたらこちらを向くかもしれない
けれど多分、表情は氷のようだろう
私はとんでもないことをしてしまったのだから軽蔑の目で見られて当然
それでも違う反応を期待している私がいるのだから憎らしい
「…眞咲…お前は…やはり天火、が「ちょっと蒼世君。来るなり帰るはないだろ?それに眞咲、泣いてたんだぜ?お前の気持ちが分からないってな。まぁ、お前のことは昔からの付き合いだし、素直になれないのも分かるけどよ…」
私の後ろから声が聞こえる
天火が、いつも調子で話す声だ
安心してしまう
甘えてばかりの罪悪感
「もうちょっと素直にならねーと、俺が奪うぞー?」
おどけたようにそう言う太陽
月は陽を警戒するように、その下に足を運んだ
ゆっくりと、その表情からは少し怒りの様子が伺えた
私は昔から蒼世を見ていたから、よく分かる
何だかぞっとした
「…来い。天火、後で覚えていろ。この罪は軽くはない」
私の手を掴むなり早々と歩き出す蒼世
そのペースはだんだんと早くなっていき足がなんとか着いて行く状態だった
ぎっちりと強く掴まれた手は離すことを知らない子どものようにも感じた
凛としたその態度に揺れが見えるのは私だけが見える幻想なのか
そうして私は、また溺れていくのだろう
蒼白の月に
離れられないこの傷と