第1章 光が差し込む
目の前には頬が腫れ上がっている天火の姿
そして私の姿を見るなり目を丸くする
羞恥のあまり顔を直視することすら難しい
そんな時、天火が立ち上がってこちらまで歩いてくる足音が聞こえる
私は即座にギュッと目をつむった
そうすると、頬に温かい手の感触を覚える
「眞咲…お前…」
分かってはいるけれど自分で色気がないことは知っているし、だからそんなに間近で見つめられても返す言葉が見つからない
でも天火なら似合うも似合わないもはっきり言ってくれそうだから少しは気が楽なような
そっと目を開けて見上げれば天火がいつもの笑みを浮かべていた
「意外と色気あんなー!」
「意外とは、余計よ?天火」
自分でも分かるくらいに黒い笑みを浮かべれば少し青ざめた顔つきになって今のはなしと何度も繰り返す天火
素直で真っ直ぐなところは彼らしいが
でも色気があると言われて少し嬉しかったのもある
心が弾んで、いつもの私よりも更に舞い上がってしまいそうだった
けれど、本当に言ってほしい相手には言われていない
つくづく単純な女だと思う
「…綺麗だな。そういうのも似合ってんぞ」
太陽の笑みは嘘を語らない
その笑顔で言ってもらえれば、どんな言葉でも救われる
私も同じく照れたように笑う
やはり君は温かい
「…?……え?」
一緒に笑っていたのは、いいのだが
どうだろう
気がつけば私は天下の腕の中にいる
驚いて顔を上げると目が髪で隠れていて見えない
逃げようにも強く抱きしめられていて思うように動けない
そうじゃない
私は動けないでいた
「なぁ…素直じゃない蒼世よりも俺を選ばないか…」
いつもよりも重く感じられる声
天火らしくない響き
だが天下は人前で弱みを見せない、こうなること自体珍しいものだ
分かっている、私が好きなのは蒼世
けれど何故か天下も放っておけない
そんな事を言われたら少し心が揺れ動いていた
-蒼世は私のことなんて
なんとも思ってないのかも
「天火…」
私が何かを口にしようとした途端
そこには大きな笑い声が響いた
「ぶわっははは!冗談。だから、そんな顔すんなよ。お前は笑ってるのが一番似合うぞ!ほら、蒼世のところに行ってやれって。大丈夫、俺のお墨付きだ」
「もう!吃驚させないで!」
天火…
本当にありがとう
「邪魔をする」
そこには抱き合う私たち
と蒼世の姿