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死を運ぶ…

第1章 死を運ぶ文鳥


スーパーの中に入り、直ぐにお母さんの姿を探す。

ついさっき入って行ったから、そんなに遠くにはいない筈だけど…。


「いない…」


一体何処に居るんだろう。

早く…早く見つけなきゃ。


「お母さん…」


何に焦っているのかは、自分自身にもよく分からない。

けど、嫌な感じがする。

一刻も早くここを出なくては。

お母さんを連れて、早く…。


「あっ」


見つけた。

あれは確実にお母さんの後ろ姿だ。

ほっとして、駆け寄ろうとした。

だけど、それは出来なかった。



パァンと、渇いた音が響きわたる。



悲鳴が聞こえ、お母さんの体が床に倒れた。

床に広がる、赤い血。


「お母さん…?」


呼び掛けながら、ゆっくりと近付く。

返事をして。

お願い。


「お母さん…」


起きてよ。

ピクリとも動かない体の前に膝をつく。


「お母さん…!」


脇腹からとめどなく流れている血。


「お母さん!」


何度も、何度も呼んだ。

返事をして。

お願いだから、返事をして…。

そう願っても、お母さんの唇が動くことはなく、閉ざされたまま。

その時、目の前に、黒い羽根が舞い降りた。


「黒い羽根…」


その後のことは、よく覚えていない。

お母さんを撃った犯人はその場で現行犯逮捕された。

遺体が外に運ばれるのを眺めながら、私の頭の中ではあの時のシーンが何度も流れていた。

どんなに願っても、お母さんは返って来ない。

今まで流れなかった涙が一筋、私の頬を伝った。

そこで私は、意識を手放した。
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