第1章 死を運ぶ文鳥
みゆかな。
それにしては時間が早い…。
私は玄関に行って、ドアを開けた。
「あ、おはよう香織ちゃん」
そこに立っていたのは、お隣に住んでいる高広さんだった。
「おはようございます。どうかなさったんですか?」
「ちょっと、贈り物が届いてね。野菜なんだけど、沢山あってひとりじゃ食べきれないからお裾分けしようと思って持って来たんだ」
野菜が、段ボールいっぱいに入っている。
私はそれを受け取った。
「ありがとうございます。母もきっと喜びます」
高広さんは、「それはよかった」と笑って帰って行った。
いい人、だな…。
大学生なのにひとりで家守って、大変そう。
段ボールをリビングに運び、テーブルの上に置く。
「うわ、いっぱい」
「まぁありがたいけどね」
それから暫くしてみゆがやってきた。
「じゃあ、留守番よろしくね。何かあったら、私の携帯に連絡してね」
「うん。行ってらっしゃい」
里子の家。
「わざわざ、ありがとう。来てくれて」
「いえ…」
里子のお母さんに案内された居間には、里子の遺影か飾られていた。
夢じゃなかったんだ。
お線香をあげ、2人で手を合わせる。
その後お茶を出され、里子のお母さんと少し話をした。
「いつも、あなた方の事を聞いてたわ。あの子と仲良くしてくれて、ありがとう」
涙を流しながら言う彼女に、私も思わず泣きそうになる。
ごめん、ごめんね、里子。
私のせいで、死なせてしまった。
本当に、ごめん…。
里子の家を出てから、2人で無言で歩いていた。
みゆには、あの黒い文鳥のこと、言っておいた方がいいよね…。
そう思い、口を開こうとした時。
「ねぇ香織。あの人、香織のお母さんじゃない?」
みゆの指さした方向には、確かに私のお母さんがスーパーに入って行くところだった。
何か、嫌な予感がする…。
「ごめん、みゆ先帰っていいよ。私、お母さんのところ行ってくる」
「うん、分かった。じゃあまた…」
手を振ってみゆと別れ、直ぐにお母さんを追いかけた。