第1章 死を運ぶ文鳥
「1日1人、周りの人が死ぬ。友人や家族、そして恋人。それが1週間続き、7日目には自分が死ぬんだ」
1週間も…?
今日は、その2日目。
友達か家族か恋人が、死んでしまう…。
そして、最後に自分も…。
いやでも、まだあれが噂の文鳥とも限らないし。
夢、だったかも知れない。
「でも、ひとつだけ助かる方法があるんだって」
忠の言葉に、はっと顔を上げる。
「それって、どんな方法?」
「……誰かが、鳴き声を聞いた人の身代わりになること。でもそれは、7日目にしか通用しないらしい」
「……」
私は視線を下に落とした。
「それって、鳴き声を聞いた人しか生き残れないってこと?」
「そうかも」
夢であってほしい。
あれは現実ではなく、私の見ていた悪夢。
本当は里子も死んでなくて、いつもの様に元気に笑ってる。
そうであってほしい…。
「姉ちゃん、変なこと聞く様だけどさ…。もしかして、あの黒い文鳥の鳴き声、聞いたんじゃないの?」
ドキリとした。
真剣な眼差しの忠が私を真っ直ぐと見据えている。
「……分からない。もしかしたらあれは、夢だったかも知れない。幻聴だったかも知れない。だって、この世にそんなおぞましいモノ、存在するわけ……」
「俺は、存在すると思ってる」
私の言葉を遮る形で、忠が呟いた。
まさか忠の口からそんな言葉が出てくるとは…。
完全に予想外の回答に動揺する。
「どうしてそう思うのかは分からない。けど、何だか、本当の様な気がするんだ」
この子は、嘘を言うような子じゃない。
それに、忠の「気がする」は、案外よく当たる。
だから私も、信じざるおえなかった。
「姉ちゃんが鳴き声聞いちゃったってことは、俺もいつかは死ぬってことだね」
「そ、そんなことさせない!私が絶対、守るから」
忠が驚いた様に私を見る。
「姉ちゃんが、俺を?」
「うん、約束する」
「……」
暫く見つめ合った後、忠が急に噴き出した。
「ははっ……うん、期待しとく」
そうだ、私が、家族を守るんだ。
そう決意を固めた時、家の中にチャイムが鳴り響いた。