第1章 死を運ぶ文鳥
「黒い…文鳥…!」
私は立ち上がり、そいつに向かって叫ぶ。
「皆を返せ!何で罪もない人たちを私から奪った。私だけ殺せばいいだろ!」
だが当然、何の反応も見せず、ただ私たちの事を見つめていた。
「危ない!」
高広さんの声が聞こえ、体を横に突き飛ばされる。
私と高広さんの体が地面に倒れるのと同時に、私のいた場所に街頭が倒れてきた。
恐怖に、体が震え上がる。
私も、死んでしまうのだろうか。
嫌だ、生きたい。
死ぬのは嫌だ!
「……『身代わり』」
突然、高広さんがそう呟いた。
「俺が身代わりになれば、香織ちゃんは助かる」
「高広さん、何言って……」
「おい!」
高広さんは一歩前に出て文鳥と対峙する。
まさか、高広さん、私の身代わりに?
「高広さんダメ!」
咄嗟に腕を掴んだ。
「大丈夫。君は……君たちは助かるよ」
「え?」
高広さんは、こちらには振り向かず優しい声色で呟いた。
君たちって、一体…。
私の手を振り払い、改めて文鳥と向き合う。
「俺が、彼女の身代わりになる。あの噂が本当なら、これぐらい出来るだろ?」
高広さんがそう言い、文鳥は静かに羽を広げた。
その瞬間、辺りが光に包まれた。
「!」
だんだん、意識が遠のいて行く。
薄れる意識の中、私は彼の手を掴もうとした。
だがそれは出来ず、意識を手放そうとした瞬間。
「───」
「高広…さん…!」
そこでプツリと、意識が途切れた。