第1章 死を運ぶ文鳥
「でも…事情話しておいて勝手かも知れないですけど、高広さんに、迷惑はかけたくないです…」
私がそう言うと、高広さんは「あはは」と笑った。
「大人には、迷惑かけてもいいんだよ。それに、頼ってもらうって言うのも、悪い気はしない」
優しく笑う高広さん。
それが、何だか透に似ていて、ドキッとした。
そんな私の様子を見た忠はフッと笑みをもらし、立ち上がる。
「高広さん、何か飲みますか?」
「あ、んー…じゃあコーヒーで」
「はい」
そう言えば忠、一度も泣いてないな…。
目の前で人が死んじゃったり、お父さんとお母さんが死んでしまったりしたのに。
強いんだなぁ…。
私とは大違い。
まるで私が妹みたいだよ。
少し悔しさも覚えたが、それ以上に忠が好きだから、甘えてしまう。
そんな私のこと、うざったいとか思わないのかな。
「はい、どうぞ」
「ありがとう」
コーヒーの入ったカップを高広さんに手渡した。
死なせたく、ないなぁ…。
数時間後。
私の想いを打ち砕くかの様に、事件は起きた。
私は、自分の部屋で眠っていた。
が、何か臭う。
焦げ臭い様な…。
私はばっと起き上がり、急いで部屋を出た。
煙!
口を抑え、階段をかけ下りる。
「あ、香織ちゃん!」
「高広さん!……これは一体…」
「リビングが燃えてる。多分放火魔だ。最近ここら辺に出没してて…」
そんな…。
よりによって何で家に。
「忠は…忠は何処ですか?」
「……」
まさか。
高広さんは、リビングのドアに目を向けた。
「多分、この中だ」