第1章 死を運ぶ文鳥
「こんなの、間違ってる」
透は私を、後ろにいる忠のもとへ連れて行く。
「香織、大丈夫か?」
「う、うん…」
「ったく、もう一生こんなことするなよ。お前はさ、死ななくていいんだから」
そう言われ、涙が溢れそうになる。
グッと堪え、力強く頷いた。
「姉ちゃん、大丈夫?」
「うん。それにしても、透と忠、どうしてここに…」
「姉ちゃんが出てった時、何か変だと思ったんだ。嫌な予感がして、透さんに電話かけて急いでここに向かった。間に合ってよかったよ」
優しく笑んだ忠。
忠のおかげで、私は助かったんだ。
「ありがとう」
私は彼らに微笑みかけた。
透も微笑んだあと、真剣な顔に戻り、みゆに振り返った。
「もうやめろ。こんなことしたって、誰の特にもならない」
「だって、だって…。私は…透くんを助けようと思って…。私は、私は……」
ぶつぶつと何か言っているみゆは、突然顔を上げ、きっと私を睨んだ。
「全部あんたのせいだ!あんたが生きてるから!」
今にもとびかかって来そうな彼女に思わず怯む。
「やめろ!」
透はみゆを止めようと彼女に近付く。
するとみゆは、ポケットから折り畳み式のナイフを取り出した。
「これ以上……香織を生かしておくわけにはいかない。私は、透くんを助けるんだ!」
そう言って、みゆは私に向かって走り出した。