第1章 死を運ぶ文鳥
「……え?」
信じられなかった。
まさかみゆからそんな言葉が出るなんて。
『香織、死んで』
その言葉が、いつまでも私の頭の中で繰り返されていた。
「香織、早くここから飛び降りなよ」
嫌だ、死にたくない…。
でも、私が死ねば皆助かるのかな。
だったらこのまま、居なくなってしまった方がいいのでは?
一歩、前に出る。
だって、透にも忠にも、傷付いてほしくないもん。
また一歩。
皆、助かる…。
また、一歩。
もう目の前に道はない。
あと一歩踏み出せば、全てが終わる。
死にたくない。
けど、皆のためだから。
死ぬのだって、本望だ。
そう思い、一歩踏み出そうとした瞬間。
腕を後ろに引っ張られ、後ろに倒れた。
「!」
そして誰かに受け止められる。
「な、何で…?」
みゆの震えた声が聞こえた。
「何でなの?」
目に涙を浮かべながら、私を受け止めた人を睨む。
「何でなの透くん!」