第1章 死を運ぶ文鳥
3人で、お父さんが運ばれた病院へと向かった。
病院に着き、お父さんが居るであろう手術室の前まで案内される。
どうか、どうか無事であります様に…。
何も出来ない自分に腹が立つ。
そうやって、願うことしか出来ないのだ。
「どうして私は子どもなんだろう…」
いつの間にか、そう呟いていた。
透と忠が私に視線を向ける。
「私が大人だったら、もう少し何か出来たのかな」
手術中と言う文字を見上げ、拳を力一杯握った。
私はどうしてこんなにも、無力なのだろう……。
数時間後。
結局お父さんは、助からなかった。
外傷が酷く、運ばれた時は目も当てられない様な状態だったらしい。
それでもまだ息があったのは奇跡だと、お医者様が言っていた。
もしかしたら、生きなければと言うお父さんの思いが報われた奇跡だったのかも知れない。
それでも結果は……。
「香織」
透の声にはっと我に返る。
「香織、気をしっかり持つんだ。今は生き延びることを考えよう」
「うん…」