第3章 蜀に行きましょう。
「優希、雷には迂闊に
近づいては駄目ですよ?」
真剣な表情で、どこか
威圧のある言い方に
コクコクと何度も頷いた。
「雷は手が早いからな。」
「そんなことないよ〜?
失礼だなぁ・・・」
やれやれと肩を竦ませる雷さんに
無意識だけれど
警戒心が出ていた。
手が早い、つまりは
女癖が悪いという事だろうか?
「ねー、今優希が思ってることは
違うからねー?」
「えっ!」
心を読まれた?
びっくりして目を見開けば
雷さんは困ったように笑って
頬を人差し指で掻く。
「優希ってば、分かりやすい。
いくらなんでも
そこまで俺を悪くしないでよ〜?」
「う、うん・・・ごめんね?」
「人懐っこいんだよ俺は♪」
「それが、厄介なんだ・・・」
遠さんが深いため息をはいて
首を振る。
それから、暫く馬を進めていたけれど
日が暮れ始めたという事で
近くの宿に泊まる事になった。