第5章 03
「ってわけで花宮、また頼むで~」
「責任もって預かります」
「すみません花宮先輩…今吉先輩には大丈夫って言ったんですけど」
「ちょっと遠回りするだけ、気にしないでいいよ」
「本当にごめんなさい。頼りにしてます」
翔一に指示された通り眉毛と変えることになると今日の朝見た同じ眼差しが彼に向けられる
なぜ彼にそんな視線を浴びせなければいけないのか、むかついてしまう
「帰ろうか、さん」
「ほんとすみません花宮先輩」
「頼むで花宮〜」
後ろでうるさい翔一を置いていき、イメージを崩さない程度に早足で歩く。一刻も早く家に帰りたい
どうせ会話なんてないんだろうと思っていたが、意外にも向こうから声をかけてきた
「なんかあったのか」
「…なんもないけど」
「何もねえんだったら巻き込むんじゃねぇよバアカ」
「は?新入生代表をバカ呼ばわりしないでもらえますか」
それに対しての返答はない。別に何か気を使って話されるくらいならいっそ無言の方がマシだ
真横を歩く彼の横顔を見つめる。確かにパーツパーツは整っているかもしれないが、女子がイケメンと騒ぐほどだろうか
そんな風に見つめていると、彼が急に立ち止まり振り返る。つられて足を止めてしまい、カバンの中身が揺れた
「…なんかありました?」
「なんもねえよ」
「何にもないなら立ち止まらないでください」
さっき似たような会話をした気がするが、気のせいだろうと言い聞かせる
そこからは相変わらず何の会話もなく、家に着いた時に送ってもらったということは間違いなかったのでお礼だけ告げた