第4章 02
翌日、朝練の前に下駄箱を開けると手紙がバラバラと落ちてきた
恐らく妬みの物ではない。俗に言うラブレターである
誰かに見られている可能性を考えている事とは違う、驚きの反応を見せて手紙を1つ1つ拾った
「(いちいち返事出すこっちの気持ちになれっての)」
イメージを崩すわけにはいかない。と言う理由から手紙の返事は書くというなんとも面倒なのである
1つ1つ少し書き方を変えて返すのは時間がかかる。だが返さないとまた面倒なことになってしまう。それだけはまた面倒すぎて面倒だ
何通かと数えながら部活に向かおうとすると、近くで何かがバサバサと落ちる音がした
「…花宮先輩!おはようございます」
「…おはようさん、早いねどうしたの?」
「いつもこのくらいに来てますよ、よかったら体育館まで一緒に行きませんか?」
「うん。一緒に行こうか」
「花宮先輩のそれ、ラブレターですか?」
「え、ああ。そうなんだよ。さんのも?」
「ふふ、どうでしょうね」
なんでコイツとこんな会話交わさなきゃなんねぇんだ。実を言えば今すぐコイツの事殴り飛ばすか罵倒するかしてから全力疾走して目に入らないところまで離れたい
だが誰が見ているかわからないこの状況、そんなことしたら変なイメージがくっついてしまう
そうなるくらいなら、このまま行くべきだ。花宮センパイの周りの評価はバスケ部でも一番良いと言ってもおかしくない
それなら花宮センパイと一緒にいるのは周りからの印象が上がるに決まっているだろう。人は、一緒につるんでいる人で判断するものだ
「それじゃ花宮先輩、私先に体育館行ってますね」
「うん。マネージャー業務頑張ってね」
「はい!頑張ります!」
開いた部室のドアからは様々なにおいがして、思わず顔をしかめそうになったがそう言ってにっこり笑って彼にお辞儀をして体育館へ向かった
ラブレターの中には、気味が悪い真っ黒な封筒が紛れていた