第4章 02
クラスでは別格扱いされ、かなりの頻度で告白され、部活でも癒し系マネージャーと謎のポジションに就いた私はそこそこ充実した中学生生活を送っていた
だがとある日、それは突如としてやってきた
「(家庭科の教科書が、ない)」
体育から戻ってきたところ、机の中に入れておいた教科書がなくなっていた。恐らく私の事を気に食わないヤツが隠したんだろう
…気に食わない奴がいるとしたら多分男じゃない、女だ。そして入学して間もないのだから可能性がないとも言えないが先輩達の可能性も低い
だとしたらこのクラスの女子の誰か、か。とそこまで考えた私は鎌をかけるかと思い、演技のスイッチを入れた
「ど、どうしよ…家庭科の教科書が…なくなっちゃった」
震えた声で言うと心配そうにしたそこそこ仲の良い女子が「大丈夫!?」と駆け寄ってきて、私は「朝まで、あったの」と再び震えた声で答えた
そしてずいぶんと前に覚えた嘘泣きのために涙を流すと、1人口元に弧を描いた女子を見つけた
「(…アイツか)」
「とりあえず今日はほかのクラスの子から借りてこよ?それから先生に相談して…」
「うん、そうする…ごめんねありがとう」
そう言ってにっこり笑みを浮かべると目の前に居た女の子は少し顔を赤くしてから「ううん!一緒に職員室行こうね!」と返し、別の男子が教科書を貸してくれるという親切がいっぱいやってきた
泣いている私に先生は気を掛けてくれて、担任の先生に訳を話しておくとの事で職員室に行く手間が省けた
未だ笑みを浮かべている彼女に不快な気持ちを抱きながら、とりあえず涙を拭い授業を受けるため姿勢を伸ばした